『塩狩峠』[ 母 ]4 と思わず縁側の方をふ……

と思わず縁側の方をふり向いてから、涙をこぼすこともあった。おとぎ話をたくさん知っていて、毎晚きかせてもらったことや、夜半に信夫が咳ひとつしても、起きあがって、肩のあたりをあたたかくしてくれたことなどが思い出された。トセのよいところだけが、次第に信夫の心に残っていった。しかし、なぜあんなに怒って死んだのかと思うと、信夫は、あの女の子のことをいいだした自分が悪いようで、ひどく心が重かった。


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